何が人を自殺や自殺未遂に追い込むのか

原文:PROTOCOL OF SUPRE-MISS p77-78

自殺を合理的な行動とは考えにくいでしょう。合理的な行動というためには,次の3つの基準を満たさなければならないからです。

  1. 自殺をする人が自分の行動の結果を十分に認識していること。
  2. 自殺が完全に自発的なものであること。
  3. 自殺以外に苦しみや問題から逃れる手段が存在しないこと

この3つの基準は,滅多に満たされることはありません。このため,自殺を合理的な行動と考えることがはばかられるのです。

人間は死がどういうものであるかわかりません。永遠とか無限とかいう概念は,人間の頭で理解できるものではないのです。人間は生きていないということを理解できないです。自殺は滅多に自発的なものではありません。苦しみや絶望から逃れる方法を見いだせずに,やむをえず自殺に至るものなのです。たしかに,自殺をする人が置かれた状況は耐えがたく,また,その抱えている問題はどうしようもないものに見えてしまいます。しかし,普通は,何かしら自殺以外に何とかする方法があります。その方法を誰かが自殺を考えている人に教えてあげて支えになってあげることが必要でしょう。

自殺をしようとする人の3つの特徴

  1. ほとんどの人は自殺に対して色々な感情が入り交じっています。これをアンビバレンスといいます。生きたいという思いと死にたいという思いの間でシーソーのように右に動いたり左に動いたりしているのです。生きることの苦しみから逃れたいという衝動と同時に生きたいという思いも感じています。自殺を考えている人の多くは,本当は死にたいと思っていません。生きることが苦しいだけなのです。もし,支えを受けることができて,また,もし生きたいという思いが強くなれば,自殺の危険は小さくなります。
  2. 自殺は衝動的な行動です。他の衝動と同じように,自殺したいという衝動は数分か数時間ほどしか続きません。自殺の衝動は大抵,日常の嫌な出来事がきっかけで始まります。気を紛らわせたり,時間が解決するのを待っていれば,自殺の危険は小さくなります。
  3. 自殺を考えている人の思考や感情,行動は柔軟ではなくなってしまいます。ずっと自殺について考えてしまい,他の解決策を考えることができなくなってしまいます。極端な考え方をしてしまうのです。

自殺を考えている人の多くは自殺についての考えや,自殺をしようと思っているということを人に伝えます。「死にたい」とか「生きる意味がない」とかいう発言をするなど,自殺のサインを発しています。このような自殺のサインを見逃してはなりません。

自殺を考えている人の抱えている問題がどんなものでろうと,自殺についての感情や思考というのは世界共通です。

図5

これは,自殺に至るまでの過程を示したモデルです。このモデルによると,自殺行動というのは積み重なっていくものであって,自殺願望から自殺未遂,そして自殺へと発展していくものです。自殺に至るまでの過程は,その期間も内容も人によってまちまちです。長い間,自殺願望が消えていたとしても,急にストレスに反応するということもあります。

このモデルは,自殺を考えている人とその周りの人とのコミュニケーションを理解するために作られました。ここには,様々な因子が考慮されています。性格や環境,ストレス,他の人の反応,社会的文化的な支援,危険を緩和する因子や危険を高める因子などです。このモデルによって,自殺の過程というのは,様々な因子によって影響を受けることがわかるでしょう。

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